個人情報流出の慰謝料相場は一人いくら?

  • LINEで送る

18年前の話になりますが、1998年、京都府宇治市がシステム開発業務を民間業者に委託したところ、再々委託先のアルバイトの従業員が、名前や住所、生年月日、転入日や世帯の詳細といった個人情報22万件を流出させた事件がありました。後の個人情報保護法の成立に大きな影響を与えた事件です。

宇治市住民基本台帳データ大量漏洩事件控訴審判決
大阪高等裁判所 平成13年(ネ)第1165号 損害賠償請求控訴事件

大阪高判平成13(2001)年12月25日

1 事案の要旨及び訴訟の経緯
(1) 本件は,控訴人がその管理に係る住民基本台帳のデータを使用して乳幼児検診システムを開発することを企図し,その開発業務を民間業者に委託したところ,再々委託先のアルバイトの従業員が上記データを不正にコピーしてこれを名簿販売業者に販売し,同業者が更に上記データを他に販売するなどしたことに関して,控訴人の住民である被控訴人らが,上記データの流出により精神的苦痛を被ったと主張して,控訴人に対し,国家賠償法1条又は民法715条(使用者責任)に基づき,損害賠償金(慰謝料及び弁護士費用)の支払を求めた事案である。
(2) 原審は,被控訴人らの請求をいずれも一部認容したため,控訴人が控訴を提起して,前記第1の1のとおりの裁判を求めたものである。
2 基本的事実関係(証拠を掲げた部分以外は争いがない。)
(1) 当事者
ア 被控訴人らは,宇治市民である。
イ 控訴人は,地方公共団体である。
(2) 住民基本台帳のデータの管理・保管
ア 宇治市長は,その住民の住民票を世帯ごとに編成した住民基本台帳等のデータ(以下「本件データ」という。)を管理・保管していた。
イ 本件データは,住民記録が18万5800件,外国人登録関係が3297件,法人関係が2万8520件の,合計21万7617件の情報であり,住民に関しては,個人連番の住民番号,住所,氏名,性別,生年月日,転入日,転出先,世帯主名,世帯主との続柄等の個人情報の記録である。そして,本件データには,被控訴人らの個人情報も含まれていた。

引用:裁判所ウェブサイト(http://www.courts.go.jp/)

その被害者の住民が宇治市を相手取った裁判で、2002年7月に最高裁は市の管理責任を問い、一人当たり「慰謝料10,000円+弁護士費用5,000円」の計15,000円の支払うように命じました。これは個人情報(氏名、住所、性別、生年月日の基本4情報)漏洩の慰謝料が一人「10,000円」だと最高裁が司法の判断として示したものであり、その後の個人情報漏洩事件で加害者を被害者が訴えた場合の基準額となっているようです。

個人情報漏洩の慰謝料の基準額 「一人10,000円」

4afbc913400228954d106e0d80a9b51d_s

また 2005年5月にエステティックTBCから約3万7千人の個人情報が流出した事件がありました。

エステティックホームページ個人情報流出事件

本件は、エステティックサロンの開設するウェブサイトで、無料体験や資料送付等に応募した者の氏名、住所、電話番号、メールアドレス等の個人情報が、エステティック会社が業務委託した会社の過失により流出した事案である。

裁判所は、流出した情報をもととするダイレクトメールや迷惑メール、いたずら電話などの二次流出・被害が生じたことから、エステティック会社に対し、民法715条に基づく損害賠償として、慰謝料3万円と弁護士費用5000円を認めた。(東京地裁平成19年2月8日判決)

東京地裁は2007年2月にひとりあたり「慰謝料30,000円」の支払いをTBCに命じています。現在、この金額が個人情報漏えいに対する慰謝料の最高額です。本件は、エステティックに対する関心という秘匿の必要性が高い情報であった点と、二次流出・被害が発生しいっそう大きな精神的苦痛を受けたとされた点が、他の判決と比較するとやや高額である理由と思われます。

個人情報漏洩の慰謝料の最高額 「一人30,000円」

a43ea6586203855584bb1fcd94cfab0f_s

裁判に係る時間や訴訟費用など数十万円以上負担して手にする損害賠償額を考えると、現実には訴訟まで踏み切る人は多くないでしょう。

一方、加害者企業側が任意で支払う見舞金があります。この場合は被害者全員に500円~1000円相当の金券を詫び状とともに送付するケースが多くみられます。

記憶に新しいところですとベネッセの個人情報漏洩3504万件では500円の金券を見舞金として送付しています。

ベネッセ個人情報流出事件(ベネッセこじんじょうほうりゅうしゅつじけん)とは、2014年7月9日に発覚した、「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」を運営する、通信教育の最大手企業であるベネッセコーポレーションの個人情報流出事件。流出した顧客情報は最大で3504万件に及ぶ。
wikipedia

このような時代背景から、いくつかの保険会社では個人情報漏えい保険を法人向けに販売しています。

98e6bcadbaee811206d5c750b673a40a_s

個人情報漏洩には外的要因と内的要因があり、過失と故意による漏洩が見受けられます。
主な事例としては、モバイル機器や記録メディアの持ち運びによる盗難や紛失、コンピュータウイルスの感染による流出、不正アクセスによる流出、関係者の作業ミスによる流出、関係者による意図的な情報の流出があります。

いずれのケースにせよ個人情報運用管理に関わる全ての関係者の知識とモラルの向上が必要となります。

  • LINEで送る

お問い合わせ

マーケティングやダイレクトメールに関することで、
お困りのことがございましたらお気軽にお問い合わせください。

☎ 03-3299-6011


お問い合わせフォームはこちら